⑦
哺乳類は呼吸をし、心臓の活動を持続させるのが最も大切なため、胸骨が発達するということ。ここでも手長猿とイルカを比較して、共通点を伝えている。この一見すると異形である両者が哺乳類の仲間であることを伝える展示が続く。子供に教えるのに、多くの人が指をさして伝えている。
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ここでは、耳の骨ということで、最も大きいとされる象とイルカの耳小骨を展示している。この小さい骨が聴覚において大切であり、生物の繊細さ、どんな大きな生物でも、地球を構成する仲間であるという認識がここで強まってくる。人間は、視覚が発達して、認識が武器になった哺乳類であり、今では、地球を破壊するほどの力を得ている。
⑨
一生で心臓が拍動する回数はどの動物でも同じといわれているのは、以前、どこかの本で読んだことがある。ここでデジャブが起きた。おそらく理科の先生が教壇で話していた。大きい動物ほど拍動する回数が少ない。ここでは、象の心臓と、ネズミの心臓を比べている。大と小をはっきりと差をつけること、何かを伝えるには、両極端なもの同士を比較してみせることが大切だと、表現の妙を感じさせる。
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これがイルカの心臓だ。巨大なハチの巣に見えた。上にイルカの頭が見えるだろう。こうやってみると、AIが全知全能の神だと騒いでいることが、小さい次元に聞こえてくる。いくら頭の中でわかったとしても、人間がわかっただけの話で、これらの精密機械以上の形を創造したものを、AIがわかるわけがないと圧倒される。人類はたかだか数億年の歴史しかないのに、地球ができて60億年の歴史をわかるかもと考えること自体、人間の業によるものではないか? もっと謙虚に学ぶ姿勢がなければ、生命への畏敬、神への畏敬がなければ、人類は滅びてしまう気がする。
神はいかにしてクジラを創造したのか? 神はいかにして犬をつくりだしたのか?
人間は、自然を利用する技術しかなく、無から創り出しものは実在しないのだから……
⑪
この形態形質:見た目は、実に興味深い。同種として互いを認識しあうことで繁殖も成立するのであり、頭部にあるツノで種ごとの差異を認識しやすくしている。動物行動学者のローレンツの言うところを、簡単に述べると、動物の群れというのは、人類が考えるよりも曖昧なものは一つもなく、えらくハッキリしたものであるそうだ。これは、後天的なものではなく、遺伝子レベルで組み込まれたものである。
人間では、ヤンキーやヤクザ社会の縄張りから始まり、ノーベル賞クラスの学者連でも、学閥セクトがあり、派閥が形成される。この縄張りがいかにしてできるのか? これが人類を読み解くカギになるともいえるから、人間について考えるというのは、爬虫類、哺乳類等、人間より単純な構造から考えていく思考は大切だろう。
⑫
ライオンとチーターを交配させて、レオポンという子供を誕生させた。しかし、レオポンは、合う種類の異性は確認されず、1代でその種を終えてしまった。遺伝子を継がせることは、できないのである。この遺伝子レベルの疑問は、分子生物学の発展が必要になるのだろう。DNAで、人間の健康だって、あらかじめ決められているというではないか。しかし、この風変りな縞模様、誰にもコミットできない孤独感、ここから聞こえてくる絶叫は、まるで私自身を表しているようではないか?
⑬
種という考え方は、科学的には、永続的に交配が可能な集団を「種」とすること。これは、実際に実験をして確認していく作業をとるらしく、モグラやクジラの交配実験はきわめて困難だとしている。困難というより、素人からすれば不可能ではないかと思えてしまう。現実的な方法はあるのかな。形質を比較して種を線引きする方法で、分類の試みは行われてきたということらしい。でも、実際は、形は違っても、同じ種があるかもしれない。
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雄のクジャクは羽の美しさで、雌の気をひいて、求愛のダンスを踊る。性的アピールは、オウギハクジラは、立派な歯を見せることで、雌をひきつけるとのこと。動物は実にわかりやすい。昆虫だって、カブトムシは、ツノで強さがわかり、勝った方が、雌を独占できるようになっている。人間は、社会的動物であるがゆえに、あらゆる力が複合的になっているけれど、わかりやすく考えてみると、男性的魅力、社会的地位、お金の3つになるだろう。ポコチンの大きさで、女性を得られるとなれば、私の嫁は、石原さとみや新垣結衣だったかもしれぬ。クジラの歯の形も、そう考えると卑猥なものに見えてくる。
⑮
赤血球の墓場といわれている、血液の秩序を保つためにある臓器が脾臓である。これは、大きい生物も小さい生物も、この大きさしかない。これを一つ失うだけで、あれほど大きいイルカの命も終わりになるなんて、いかにして、この生物を設計できるだろう。このメカニズムを、いつ解明できるのだろう。すべてをあまねく知り尽くして死にたいというファウスト的衝動が、私の胸に宿ってくる感じがする。