nyoraikunのブログ

日々に出会った美を追求していく!

紅白歌合戦が思い出させてくれた、音楽を楽しむ心


今年ほど、「紅白歌合戦」をただ流して見てしまった年は、なかったかもしれない。
以前はどの曲をダウンロードするか一曲ずつ吟味し、車で聴くのを迷いながらメモを取るのが常だった。しかし鮮魚部門の責任者になってからは、常に気持ちが張り詰め、どの曲も胸に染みることがなくなってしまったのだ。
アスペルガーの特性をもつ部下とのやりとりを重ねるうち、私自身も心の余裕を失い、もしかすると「カサンドラ症候群」のような状態になっていたのかもしれない。

そんな殺伐とした日常を乗り越えて迎えた正月商戦が落ち着いたとき、録画していた紅白を改めて観なおしてみた。
SNSで橋本環奈の態度が槍玉にあがっていたことを耳にしていたが、舞台上ではこれっぽっちも感じさせず、安定したアナウンスと豊かな表情で観客を魅了していた。あの安らぎを与える空気感は、彼女ならではの魅力だろう。
有吉に関しては、どうも面白さを実感しきれない私がいるけれど、数多くの冠番組を抱えるほどの人気者ということもあり、やはりどこか人を惹きつけるオーラを感じる。何気ないことを素直に話す彼のスタンスは、自然に視聴者を笑顔へ導いているようにも思えた。

印象に残った歌といえば、こっちのけんとのパフォーマンスがまさに大衆を意識したもので、オープニングにふさわしい“当たり”だった。
LE SSERAFIMの「CRAZY」は、芸能大国・韓国の名をまさに示すような、完成度の高い振付と歌唱。日本のアイドルグループにはなかなか真似できない水準で、日韓の実力差をまざまざと感じさせた。
あいみょんの「会いに行くのに」は、歌い終わった後の照れた笑顔がとても可愛らしく、思わずこちらまで温かな気持ちにさせられた。そうした些細な表情を、私たちは見逃さない。まさに「神は細部に宿る」という言葉がぴったりだろう。

Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」も、以前YouTubeで聴いたときは「なんだか心にひっかかる」くらいの印象だったのだが、今回の紅白では全く違う曲のように心を揺さぶってきた。NHKの演出効果も大きいのだろう。音だけでなく、視覚やステージの雰囲気までもが加わることで、まるでドラマを見ているような没入感が生まれるのだ。多くのドラマ主題歌を手がけるアーティストの曲には、そうやって私たちの脳内で幾つもの物語が広がっていく。

米津玄師の「さよーならまたいつか!」についても、あの独特な振付と国会議事堂さながらの舞台演出があったからこそ、私たちの心に深く届いたのだと思う。米津がアスペルガーだという噂を耳にすることがあるが、彼が持つ繊細な感性や世界観は、むしろ多くの人に届き、共感を呼んでいる。障害や特性のレッテルでは説明しきれない、人間の多様性と創造力を感じさせるパフォーマンスだった。

さらに、西野カナの歌声はまるで魔法のように胸を打つ。曲のメロディーラインが持つ不思議な力が、人の心をやさしく包み込んでくれる。

こうして改めて振り返ってみると、今年の紅白は「表現とは何か」を考えさせられるショーだったと思う。これほど国家規模で音楽を大切にできる国に暮らしていること、それ自体が幸せなことだと感じる。イノベーションが起こりにくい環境など、問題は山積しているのだろうが、それでも歌が人々の心をつなぎ、国全体を優しい空気で包んでいることに変わりはない。

忙殺されていた日々の中で、いつの間にか音楽を楽しむ心を閉じていた自分に気づかされた紅白だった。ふとしたきっかけで観なおしてみると、大好きだった「歌うこと」「感じること」を思い出させてくれる。そんな時間を与えてくれた日本の年末は、やっぱり悪くない──そう思える、少しだけ前向きな気持ちで新年を迎えられそうだ。

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