

右足から、血が出ることがある。
風呂上がり、気づいたら床が赤く染まっている。
大怪我ではない。痛みもない。
ただ、見た目だけがやたらとショッキングなだけだ。
それでも両親は狼狽する。
「病院へ行け」「ちゃんと診てもらえ」と何度も言う。
心配をかけている負い目もあった。
だから、仕方なくクリニックを探した。
——この時点で、もう負けていたのかもしれない。
「不安」は、最高の営業ツールだからだ。
大学病院は診てくれない
大学病院も整形外科も、同じことを言った。
「うちではやっていません」
つまり命に関わる病気じゃないということだ。
本来なら、その時点で気づくべきだった。
緊急性のない症状に、専門クリニックが乱立している理由。
それは「医療」ではなく
“商売”だからだ。
クリニックに入った瞬間、空気がおかしい
立川のそのクリニックに入った瞬間、違和感が走った。
患者が少ない。
やたら綺麗な看護師。
サロンみたいな内装。
ここは病院か?
それとも美容整形か?
壁には、グロテスクな静脈瘤の写真がびっしり貼ってある。
あれは説明資料じゃない。
恐怖を植え付けるためのポスターだ。
「放っておくとこうなりますよ」
そうやって、患者の心を削る。
やり方が露骨すぎて、吐き気がした。
「すぐ手術したほうがいいですね」
診察は流れ作業だった。
エコーを当てて、医者は即断する。
「両足とも静脈瘤がありますね」
「出血もしているし、早いほうがいい」
「今日でも予約できますよ」
早いほうがいい。
今すぐ。
すぐ手術。
——なぜそんなに急かす?
こっちは普通に歩けるし、痛みもない。
命に関係ないんだろ?
なのに、この焦らせ方。
これは医療じゃない。
訪問販売と同じ手口だ。
考える時間を与えない。
不安なうちに契約させる。
完全に営業トークだった。
そして最後に出てくる「値段」
費用の説明は最後の会計をすべて済ませた後に行うのだ。
10万円超。
オプションをつけたら15万、20万。
最初に言わない理由は単純だ。
言ったら、みんな帰るからだ。
汚い。
本当に汚いと思った。
看護師も「早く決めたほうがいいですよ」と畳みかける。
父親が口を出すと、露骨に嫌な顔をする。
家族が冷静になるのが、都合が悪いんだろう。
つまりこの人たちは、
患者の健康より
患者の財布のほうを見ている。
詐欺ではない。でも、限りなく黒に近い
医学的には嘘じゃない。
だから違法でもない。
でも、分かる。
ここで働いている人たちも、
どこか後ろめたい顔をしている。
「必要ないかもしれない手術」を
「必要だ」と言って売る。
それはもう、医療の皮を被ったビジネスだ。
いや、はっきり言おう。
不安商法だ。
僕は逃げた
結局、手術はキャンセルした。
前金5,000円は返ってこなかった。
初診料も合わせて8,500円。
まあいい。
授業料だ。
でも世の中には、この構造に気づかず
10万、20万、30万と払ってしまう人が山ほどいるんだろう。
「健康のため」
「家族のため」
「将来のため」
その善意が、全部金に変換される。
そんな世界が当たり前みたいに回っている。
だから書いている
これは単なる体験談じゃない。
警告だ。
「専門」「クリニック」「今すぐ手術」
この言葉が並んだら、まず疑ったほうがいい。
医療は人を救うものだと思っていた。
でも現実は違う。
金になる場所に、医療は群がる。
それを、僕は立川で見た。
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