■ 「中東の北朝鮮」と呼ばれる国へ
日本館を出たのが17時30分頃。
アースマートの19時10分予約まで少し時間があったので、Xで話題になっていたトルクメニスタン館に立ち寄ることにした。
トルクメニスタンは中央アジアに位置し、豊富な天然ガス資源で潤う一方、強権的な体制から「中東の北朝鮮」と称されることもある国だ。
個人旅行はほぼ不可能で、現地を訪れるのは難しい。
だからこそ、この万博会場で「禁断の国」に足を踏み入れられるというのは、強烈にそそられた。
■ 重厚な建物、異様な高級感
並び始めた時、案内表示では「待ち時間90分」とあったが、実際には45分ほどで入場できた。
外観は白を基調とした荘厳な建物で、壁面に刻まれた紋様や巨大スクリーンの映像も緻密で豪奢。
通りかかる来場者の多くが、思わず足を止めてカメラを向けていた。
SNSでも「他の国と明らかに雰囲気が違う」「国家ブランディングに本気出している」と話題になっていたが、
その言葉どおり、異世界に迷い込んだような圧倒感があった。
■ 国家を讃える映像ショー
まず通されるのは、巨大スクリーンが取り囲む映像シアター。
ここで、トルクメニスタンという国が「いかに偉大で、選ばれし民族であるか」を、複数の伝記的エピソードや歴史映像を通して讃え上げる。
豊富な天然ガスは「尽きせぬ黄金の黒い水」と紹介される。
世界がSDGsを掲げる時代に、あえて資源の豊かさを誇示する姿は、ある意味で清々しいほどだった。
映像に登場する女性たちは、毅然とした口調で国を称賛し、背筋を伸ばして語る。
その様子はまるで北朝鮮のアナウンサーのようで、隣の婦人グループが
「やっぱりあの辺りは綿花が有名よね」とつぶやいていた。
確かに、綿花栽培もトルクメニスタンの主要産業として誇らしげに紹介されていた。
■ 2階展示──豊穣と誇り
映像を終えると、螺旋階段を上って2階の展示エリアへ。
そこでは、綿花のドレスや伝統工芸、天然ガス関連の巨大模型が並び、
すべてが「国家の栄光」を語るようにきらびやかだった。
入り口にはセルダル・ベルディムハメドフ大統領(現国家元首)が彫刻のように整った顔立ちで、
その「美しさ」が威圧感をやわらげているようにも感じた。
「ああ、自分もルッキズムに毒されているのかもしれない」とふと我に返った。
■ 異世界を垣間見た感覚
このパビリオン全体から伝わってきたのは、
**「世界に開かれていない国が、世界に向けて発する必死の自己紹介」**だった。
どこか息苦しくもありながら、その真剣さと誇りには、胸を打たれるものがある。
実際に訪れた人々のSNSでも
「怖いけど目が離せない」「美術館のように豪華」「テーマパーク的な虚構感がすごい」
といった声が多く、私もまったく同じ感覚を覚えた。




















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