
鬼滅の刃を観終えた夜、僕は東横イン歌舞伎町の一室で、ふと「現実から少しだけ逃げたい」と思った。そんな時、ふと思い出したのが《東京アロマスタイル》。癒しと快楽のはざまを漂うような時間が、そこにはある。
本当は寝る前に呼ぼうと考えていたが、すでに予約でいっぱい。案内されたのは午後7時15分という、まだ宵の口の時間だった。少し早いかと思いながらも、扉を開けて現れた彼女──“ヒカリさん”の姿に、言葉を失った。
「SSS級」「八頭身」「韓流美女」。サイトに並ぶ褒め言葉は大げさではなく、むしろ足りないくらいだった。笑顔は自然で、会話も軽やか。ふいに「シャワー、一緒に入る?」と囁かれた瞬間、心の氷が音を立てて溶けていった。
すべてが自然だった。オプションを勧められた時に、一瞬夢から現実へ引き戻されるような感覚もあったが、それすらもこの“遊戯”の一部なのかもしれない。
施術は丁寧で初々しく、それでいて芯がある。昼間は社会人として働きながら、この夜の仕事もこなす彼女。その姿に、どこか「まとも」な香りがした。女子大生のブランド力も相まって、彼女は“当たり”だったのだと思う。
──ふと、彼女の瞳の奥に、「鬼滅」の鬼の目と似た光を感じて、ドキリとした。
映画『鬼滅の刃』は、人の内面にある“鬼と仏”の相克を描いている。感動のラストに涙した僕は、ホテルに戻ると深い眠りに落ちた。そして夢の中で、ヒカリさんが再び現れた。
彼女の人生にも、きっと何か消えない“影”があったのだろう。夢の中で僕はうなされ、朝を迎えた。
──だが、最後の瞬間、彼女が僕の顔を見つめながら導いてくれたクライマックスは、間違いなく“現実”だった。
「鬼滅したいか?」と問われれば、僕は首を横に振るだろう。僕の中にはまだ“鬼”が残っている。いや、ずっと“鬼”だったのかもしれない。女性との軋轢、不和、裏切り、喪失……。
──それでも、あの一夜は、少しだけ“人間”に戻れた気がした。

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