




鬼滅の刃の上映が終わったのは、夜もすっかり更けた12時過ぎだった。
興奮と余韻が入り混じる頭の中、目の前にあるのは東横インの簡素で静かな部屋。けれど、眠れなかった。
どうしても街の空気を吸いたくなり、私は夜の新宿に出た。
飲食店はまだまだ賑わっている。若者、外国人観光客、そして、ただふらふらしている誰か。
鬼滅の刃の上映が終わったのは、夜もすっかり更けた12時過ぎだった。
興奮と余韻が入り混じる頭の中、目の前にあるのは東横インの簡素で静かな部屋。けれど、眠れなかった。
どうしても街の空気を吸いたくなり、私は夜の新宿に出た。
飲食店はまだまだ賑わっている。若者、外国人観光客、そして、ただふらふらしている誰か。
そのとき、目の前をバイクが通り過ぎていった。
5人乗りのスクーターだ。前の男は完全に“族上がり”風。
後ろには刺青を見せびらかすような格好の女性たちが4人、しがみつくように座っている。
「私も乗せて!」
そう言って、また別の派手な格好の女の子が、笑いながら手を挙げて群がっていた。
それはもう、無秩序を誇るような一場面だった。
誰も彼も、ルールなんかないかのように、生きたいように生きている。
私はただその光景を見つめていた。少し前まで、劇場の中で涙を流しながら“柱”たちの死闘を見ていた自分が、今こうして、この生々しい現実の“夜の戦場”に立っていることが、不思議で仕方なかった。
もう仕事なんてしたくない。
このままずっと、ふらふらしていたい。
そう思った。いや、そう思ってしまった。
東横インのベッドに戻る気はまだ起きなかった。
ラーメン屋の灯りがやたらと温かく見えた。
あの5人乗りのバイクが、またどこかの通りで誰かを乗せて走っているかもしれない。
それをただ想像するだけで、この夜はまだ眠るには惜しいと思った。
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