nyoraikunのブログ

日々に出会った美を追求していく!

新宿バルボラ 日比野環――生きづらさと快感のはざまで


「日比野環さんとのお遊びは、初めてですか?」

そう店員さんに聞かれたとき、私は素直にうなずいた。新宿のバルボラは何度目になるだろうか。これまではいつも50分コースを利用していたのに、あるとき90分コースで二度の快感を味わったことが忘れられなくなり、4万1千円をつぎ込んでしまったのだ。以前は、行為が終わるたびに「バカじゃないか」と後悔して、もう来るまいと思っていた。それでも今では、「この快楽のためにお金を稼いでいるのかもしれない」とすら感じている。深海魚ソープと呼ばれる場所もあるが、バルボラの内容との違いは大きく、比較にならないほどだ。

今回の女性も、とても綺麗だった。小顔でやせ型、胸は小ぶりのお椀のように整って可愛らしい。色気も悪くない。でも、彼女はいったん話し始めると止まらなくなるタイプらしく、劇団四季の話題を出したら、そのままずっとしゃべり続ける。とはいえ、そのおしゃべりは楽しく、こちらの気持ちをきちんと汲み取ってくれる。おそらく何らかの発達障害の特性はあるのだろうが、「積極奇異型のアスペルガー」の部下とは違って周囲への配慮が見える。むしろ、ADHDの傾向が強いのかもしれない、と思わせるほどだった。

彼女が幼い頃、渋谷の一軒家に住んでいて、3階から怒りにまかせて椅子やテーブルを2階の親の部屋に投げ落としたり、壁を破壊したりしていたことがあるという。本人は子供が好きらしいが、「自分の遺伝子を継いだ子供が生まれるのが怖い」と言う。その衝動的な行動や、自分の意思で止められないもどかしさは、まさに発達障害の特徴と重なる部分だろう。きっと、笑顔の奥にはさまざまなトラウマが隠れているのだと思うが、彼女はそんな内面を決して表に出さず、興味関心を目いっぱい話してくる。そのテンションは正直、こちらも楽しい。映画が大好きで、白人俳優ならジョニー・デップ、黒人俳優ならウィル・スミスと、話の要点を的確に捉えているのは見事だった。

さらに、祖父が鹿児島の飛行場で働いていた関係で、神風特攻隊の映画をたくさん観ており、専門家以上の知識があるようだ。兄弟に自衛隊員がおり、外国人を好まないのも、そうしたナショナリズムの影響かもしれない。ただし、彼女がもつ発達特性を考えると、学校生活や日常の仕事では多くの困難があったのではないかと思う。実際、学生のころはうまくいかなかったと話していたし、将来の夢はピクサーへの就職だったそうだ。数年前にアメリカへ出向き、ピクサーの施設を1か月かけて見て回り、そのときはものすごく感動したと興奮気味に語っていた。興味関心が幅広く、その多動性はまさにADHDの特徴ともいえる。でも、それは本人が困っているからこそ考えられるカテゴリーであって、二人で楽しく過ごすうえでは、あえて問題視することもない。ただ、彼女の笑顔の裏側には、やはり生きづらさを抱えているのだろうと感じた。

キスに関しては、あまり積極的ではないようだった。私を満足させようと一生懸命に向き合ってくれたのは伝わってきたが、舌を絡ませるようなディープキスはない。けれど、その誠意には感謝している。真冬の新宿はビル街に囲まれているからか、思ったほど寒くはなかった。外国人観光客が増えた新宿の雑踏をかき分けながら、私は第一興商株主優待券5,000円分を握りしめ、「じぶんどき東口店」へ向かった。ところが、以前とは違い、随分と待たされたうえに白いご飯の提供はないと言われ、仕方なく黒毛和牛のステーキと白子の天ぷら、それに釜めしを頼んだら5,000円をオーバーしてしまった。ちょっと痛い出費だけれど、悪い気はしなかった。

ところが、ふと頭をよぎるのは、職場のアスペルガー傾向の部下の言動や行動だ。その悩みがまた胸を占める。映画もダメ、風俗もダメ、ご馳走もダメ──私の鬱々とした気分を本当に救ってくれるのは、異動くらいしかないのだろうか。そんなことを考えながら、雑踏の中で自分の心を疑い始めている自分に気づくのだった。

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