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『倫敦塔』夏目漱石の冒頭部を自分なりに書き換えてみた!

 夏目漱石は二年の留学中ただ一度倫敦塔を見物した事がある。その後再び行こうと思った日もあるがやめにした。人から誘われた事もあるが断った。一度で得た記憶を二巡目にぶち壊すのは惜しい。三たび目に拭い去るのはもっとも残念だ。
 僕は、登場人物の名前を夏目漱石にした。「枕石漱水」という四字熟語があって、俗世間から離れ、川の流れで口を洗い、石を枕として睡眠をとるような隠居生活を送りたいという願いが込められている。
冒頭では、一度しか倫敦塔を訪れてないということにしてある。実際は、ロンドン大学に通うたびに、いつも車窓から横目で見ていた。僕が住んでいたところは、テムズ川沿いにあるタウンオブラムズゲートの安アパートの一室だった。北にあるケネットストリートには、売春宿があって、僕は同じ女性を二度指名することはなかった。倫敦塔を訪れることを躊躇する気持ちを描く時、脳裏に閃くのは、あの西洋梨の匂いのする内腿の柔らかさであった。続きを書こう。
 行ったのは着後間もないうちの事である。その頃は方角もよく分らんし、地理などはもとより知らん。まるで御殿場の兎が急に日本橋の真ん中へ抛り出されたような心持ちであった。表へ出れば人の波にさらわれるかと思い、家に帰れば汽車が自分の部屋に衝突しはせぬかと疑い、朝夕安き心はなかった。
 僕は、前作『吾輩は猫である』を発表した際、出版社から地方の田舎で大変な人気である旨を伝えられた。東京に憧れて上京した若者が、ロンドンの都市を前にたじろぐ夏目の姿に共感して欲しいという狙いもある。
 五街道の起点である日本橋は、江戸の牛込で育った僕からしても、随分と憧れたものだった。狸が抛り出されたというより、老若男女に人気のある兎でなければならない。
 表へ出れば人の波にさらわれるかと思い、家に帰れば汽車が自分の部屋に衝突しはせぬかと疑い、朝夕安き心はなかった。この響き、この群衆の中に二年住んでいたら吾が神経の繊維もついには鍋の中の麩海苔のごとくべとべとになるだろうと……
 英国では、米国で流行しているネズミをカリカチュアしたミッキーマウスとやらが、新聞紙面を賑わしている。なんでこのようなものが婦女子に流行っているかと不思議に思い、心理学の教授に聞いたら、顔を逆さにしてみれば何かに似ていないか? と大真面目に口にした。赤面せずに言えば、男根である。深層心理をそれとなく刺激することが大切だとこの可愛いネズミから学んだ。
 前述において、人の波にさらわれるとか、汽車が部屋に衝突せぬかとか、神経の繊維はついには鍋の中の麩海苔だとか、誇張を交えて例えたのは、それは、女性を抱く肉感そのままを、英国の浮薄な都市生活のたとえにしていると誰が知ろう。

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カテゴリ
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