
私は、スーパーマーケットチェーンで、部門の責任者をしています。
中途採用で入社し、現場で10年働き続けてきました。
いまではひとつの店舗を任され、毎日、生鮮売場の最前線に立っています。
この10年間、現場の空気は大きく変わってきました。
変わったのは、消費者のニーズや競争環境だけではありません。
**会社そのものの「体質」が、今まさに問われている。**私はそう感じています。
■ ROEが低迷し続ける「肥満体質」の正体
私の勤務先のような老舗スーパーでは、自己資本利益率(ROE)が低く、経営状態が長年厳しいままでした。
その一因は、**かつての大量採用時代に形成された「働かない中高年層」**だと私は見ています。
バブル期以前、日本全体が右肩上がりの経済成長を信じ、人材をこぞって採用していた時代がありました。
企業は“質より量”を優先し、結果として「成果を出さない人材」が組織に蓄積されたのです。
私が入社した頃、どの店舗にも
「売場を聞かれても“あっち”と指さすだけの社員」
が一定数いました。知識も責任感もなく、それでも給与は毎月支払われている。
そのツケが、いま、私たち現場世代に重くのしかかっています。
■ 店舗は減り、人は減らされ、業務だけが増える
この10年で、複数の不採算店舗が閉鎖されました。
一方で、現場では人員が削減され、少ない人数で以前と同じ、あるいはそれ以上の業務をこなさなければなりません。
若手への待遇改善には積極的です。
これは戦略的には「選択と集中」であり、正しい面もあるでしょう。
しかし、中堅層である私たち世代には、それに代わる希望が提示されていない。
40代後半で副店長どまり、50代でようやく店長になったとしても、
転職市場ではキャリアの再評価が難しい。
それでも会社のためと、人員を減らされながら、現場で耐え続けるしかありません。
■ 再雇用者の現実と、若者との待遇格差
再雇用制度で60代の社員も多く働いています。
もちろん、経験を活かして貢献している方もいますが、
現実には戦力として数えづらい人材も混在しています。
一方で、将来有望とされる若手は、経験不足でも“未来への投資”として厚遇されがち。
こうしたアンバランスな人材配置が、現場にゆがみを生んでいるのです。
■ 老舗企業に共通する「二重の構造問題」
この問題は、私の勤務先だけではありません。
多くの老舗企業が、次の2つの課題に直面しています:
- バブル期の大量採用による“肥満体質”
- 少子高齢化による深刻な人手不足
この2つの矛盾が同時に押し寄せ、
“人は足りないのに、働かない人を養い続ける”という不条理な構造が、今の現場を苦しめているのです。
■ それでも、現場からできることはある
私は、部門の責任者として、粗利の改善や廃棄削減に取り組んでいます。
また、生成AIを活用し、作業効率化や棚割改善、日報作成の自動化などにも挑戦しています。
「現場で成果を出し続けること」
「若手と共に働き、育てること」
この2つが、今の私にできる最大の貢献です。
■ 最後に──変革は、現場の“言葉”から始まる
私たちの世代は、上には押し込まれ、下からも突き上げられる中間層です。
でも、だからこそ見えるものがある。語れることがある。
この文章を通して、少しでも同じような悩みを持つ誰かに届けばと思い、筆を執りました。
変革は、いつも現場から始まる。
そして、現場が沈黙しないことこそが、会社の未来を支えると信じています。
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