智慧の書– category –
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日本科学未来館に行って気づいた──「未来」を覗くことは、結局“いまの自分”を見つめる行為だった
ムセス大王展を観た足で、日本科学未来館へ向かった。入館したのは午後1時30分。閉館は5時。「4時間半もあれば余裕だろう」──そう思っていたのは、まったくの誤算だった。 未来館の真骨頂は、後述する巨大な展示だけではない。上階にあるドームシアターの... -
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ラムセス大王展を訪れて──口コミと体験の交差点で見えたもの
ラムセス大王展が話題になっていたので、足を運んでみた。私はもともと、口コミを参考にして出かけることが多い。多くの人が「良い」と評価する展示やイベントは、実際に訪れても外れが少ない。大阪・関西万博もそうだった。人気ランキングや来場者ブログ... -
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【連載第7回】アースマート──命を食べる、その未来を考える
■ 嵐の松本潤が「いただきます」から始まる 扉の前に立つと、巨大スクリーンに松本潤が現れ、手を合わせて「いただきます」と告げる。すると壁がゆっくりと開き、暗がりの中に広がる展示空間──それがアースマートだ。 このパビリオンでは、「食」が限られ... -
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【連載第6回】トルクメニスタン館──禁断の国が放つ、異世界の光
■ 「中東の北朝鮮」と呼ばれる国へ 日本館を出たのが17時30分頃。アースマートの19時10分予約まで少し時間があったので、Xで話題になっていたトルクメニスタン館に立ち寄ることにした。 トルクメニスタンは中央アジアに位置し、豊富な天然ガス資源で潤う一... -
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【連載第5回】日本館──静かな熱意と循環の未来
■ 地味だけど、胸を打つ日本館 2025年大阪・関西万博の日本館は、他の派手なパビリオンと比べると一見地味だ。エンタメ性で大衆の人気を集めるタイプではない。だが、一歩足を踏み入れると──そこには、日本らしい真面目さと静かな情熱が満ちていた。 最初... -
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【連載第4回】イタリア館──人類の魂が宿る場所で
■ 世界が息づく空間 世界の国宝級芸術が来日すると、たいてい人混みに圧倒されて「なんだかな」と思うことが多い。だがレオナルド・ダ・ヴィンチの**受胎告知**を初めて見たときは、違った。今にも動き出しそうなほど精緻で、生々しく、言葉を失った。現代... -
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外面を削り、内面を掘り出す ― 生をめぐる思索
外面から削り出される内面 ― 生をめぐる思索 私たちは普段、「内面」と呼んでいるものを、あたかも独立した実体のように考えがちです。しかしよく考えてみると、それは外の世界からの印象や想像の堆積に過ぎないのではないでしょうか。むしろ危ういのは、... -
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16歳の安部公房に学ぶ――自分の目で見て判断するということ
若き日の安部公房と、私の原点 私と安部公房の生い立ちは大きく異なる。彼は小学生のころから完全なエリート教育を受け、3年生にして年間250冊の「有益」とされる本を読破させられ、数学の天才と評された人物だ。一方で私は、「自分の目で見て、自分の判断... -
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社畜に疲れた44歳が三島由紀夫とAIに救いを求めた理由
「仕事に追われ、疲れが抜けない。自由を願いながらも正社員という安定に縛られてしまう――そんな社畜的な日常の中で、私は三島由紀夫と安部公房の全集、そしてAIに救いを求めるようになった。44歳のいま、文学とテクノロジーの力を借りて『文化的に生きる... -
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国立西洋美術館で出会った異彩を放つ女性と、絵画が教えてくれた“オンリーワン”の生き方
美術館で出会った、対照的なカップル 展示室で見かけたカップルが印象的だった。女性は一枚一枚の絵をじっくり見つめ、細部まで味わうように時間をかける。一方、男性はペットボトルの水を飲もうとして係員に止められるなど、どこか「彼女についてきただけ... -
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国立西洋美術館「素描展」鑑賞記録
――道具から巨匠の筆致まで これまで前を通り過ぎるだけだった国立西洋美術館。初めて足を踏み入れると、その展示の密度と質に圧倒された。国立の文学館や博物館と同じく、やはり「お金のかけ方が違う」と感じさせられる。今回は常設展と特別展「素描展」を... -
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『新・JAPONISM』体験レポート
縄文土偶から初音ミクへ――“祈り”が育んだ日本アニメ文化の源泉をたどる1時間 メタ情報 想定読者:日本文化・アニメ・美術展に関心のある20〜50代 SEOキーワード:新JAPONISM, 東京国立博物館, 体感型展示, アニミズム, 日本アニメのルーツ 想定文字数:約... -
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『永劫回帰に横たわる虚無展』──三島由紀夫の魂を現代美術で解剖する
会期:2025年7月15日~9月25日 会場:GYRE GALLERY(渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F) 入場料:無料 企画:スクールデレック芸術社会学研究所 所長・飯田高誉 この展覧会は、三島由紀夫生誕100年、そして昭和100年という節目を記念して開催されている。テーマ... -
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【上野の森美術館レポ】『万博の時代』展で見つけた、暑さと人間と芸術のリアル
猛暑の東京。気温は体感で体内まで溶かされるような40度近く。そんな中、私は上野の森美術館で開催されている**企画展『万博の時代』**へ足を運んだ。開催期間はたった14日間(7月13日~27日)にも関わらず、会場は驚くほどの賑わいで、観光客、とりわけ外... -
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12歳で世界を動かした少女と、プロ野球の神様が死んだ日──ヒロシマと長嶋茂雄、そして「力」と「平和」への葛藤
「平和は声をあげ続けた者によってしかつかめない」そう語った一人の被爆者がいた。 NHKスペシャル 『シリーズ 核の80年(2) ヒロシマ 世界を動かした2人の少女』 を観た。そこには、広島で被爆した2人の少女――佐々木禎子と中村節子の姿が映し出されていた...