9月8日、新国立劇場で安部公房作・加藤拓也演出の舞台『友達』を観劇してきました。有村架純や伊原六花といったテレビでお馴染みのスターが多数出演する豪華なキャストで、客席は満席。スターシステムが生み出す幻想的な空気感と、安部公房の独特な世界観に引き込まれました。
『友達』は、9人の「善良」な家族が突如一人暮らしの主人公の家に押し入り、彼をその家族のルールに従わせ、最終的には檻に閉じ込めるという異様な物語。書かれたのは1967年にもかかわらず、現代の社会を風刺しているかのようで、まさに時代を超越した作品と言えるでしょう。
舞台装置はシンプルで、都市のビルのようなセットが背景にあるのみ。しかしその簡素さが、逆に登場人物たちの異質さを際立たせ、圧倒的な緊張感を生み出していました。スマホを持ち日常生活を営む設定に現代アレンジが施されており、演出家の工夫が光っていました。
有村架純の神秘的な存在感
有村架純の登場シーンでは、彼女の役柄が持つ「聖母マリア」のような純粋で優しい雰囲気が舞台全体を包み込みました。テレビや映画で見慣れた顔がそこにあるのに、まるで別の次元に存在しているような錯覚さえ感じました。彼女を見つめながら、「この人に触れてはいけない、近づいてはいけない」と胸中で何度もつぶやく自分がいました。そんな有村架純を、私は「幽霊」に例えたくなるほどに神々しく感じたのです。
思わず「もしバッグからナイフを取り出して刺してしまったら…?」と、一瞬の悪魔のような衝動が頭をよぎるほど、有村架純は私にとってそれほど強烈な存在感を放っていました。彼女が持つ「力」に自分が支配されていると認めざるを得なかったのです。
魅力溢れるキャストたちの演技
伊原六花は、痩せていて顔立ちが美しく、舞台に立つ姿からは普段の生活では見られない魅力が溢れ出ていました。山崎一が演じる父役や、林遣都演じる長男役、主人公を演じる鈴木浩介も圧巻で、彼らの身のこなしには「オーラ」が感じられました。舞台上での存在感が、私たち観客の心を揺さぶります。
カーテンコールでは、有村架純が一歩も引かず、無表情のまま前を向いて立っていました。その姿は、まるで天冠をつけた幽霊のようで、神々しい美しさに背筋が凍る思いがしました。
次は劇団四季の『アナ雪』にも挑戦?
『友達』のような刺激的な舞台を観た後は、次は劇団四季の『アナと雪の女王』も観に行きたくなりました。スターシステムに頼らず、実力派の役者たちがどんな演技を見せるのかに期待が高まります。
舞台観劇の醍醐味を存分に味わえるひとときでした。