婚活で出会ったデザイナーのまりこと、新宿での食事デートの日。メールのやり取りから始まったこの日のプランは、意気込みと期待でいっぱいだった。私は彼女と再び会うことを楽しみにしていたが、現実は少し違っていた。
食事中も止まらない「まりこのトークショー」
「こんにちは!また新宿でお会いしましょう!」と元気に始まったやり取り。新宿でのお店選びや予約の確認など、婚活あるあるの面倒な段取りを済ませ、いざお店へ。まりこは食べながらもトークが止まらないタイプで、こちらの質問にすぐ答えるのではなく、延々と自身のエピソードを語り続ける。
まりこは「食べ物に好き嫌いはないです」と言うけれど、その口からこぼれる情報量は凄まじい。美術書の話から英語の勉強まで、こちらの興味とは関係なく自分の世界を広げていく。初対面の婚活デートでのこの話題の選び方が、不思議と私の心を少しずつ締め付けてくる。
デートの現場:食事処で感じた異空間
当日、寒さが身にしみる新宿の夜。地下に降りると、デートスポットの雰囲気に緊張感が漂う。店内ではカップルが寄り添い、幸せそうに鍋をつついている。対照的に、まりこと私の間には何か無形の壁が立ちはだかる。
まりこは話すたびに口を大きく開け、歯茎まで露わになる。そこに巻き込まれるのは食材だけではなく、彼女の人生そのものだ。無意識のうちに、食事のたびに彼女の口から出てくる何かが気になり始める。食欲は減退し、気づけば食材の匂いが歯茎の臭いに感じられ、胸がムカつき、吐き気さえ覚えた。
「ノイローゼみたいな話し方はやめたほうがいい」
まりこは自分の生活の話をノンストップで続け、仕事の話、家族の話、さらには不安な未来についても語り始める。「コロナで仕事が無くなるんじゃないか」「もう年齢的に結婚は無理なのでは」と、次々と吐き出す悩みの数々。気づけば私の心はその重さに圧倒されていた。
帰り際、まりこは何の挨拶もなく改札口を通り過ぎ、私を苛立たせる。この日の終わりに「もう一度会いたい」とは思えなかった。まりこからの突然の「交際終了」の連絡にも、「あなたも疲れていたんだね」と納得せざるを得なかった。
「観念奔逸みたいな話し方はやめたほうがいいよ。相手を疲れさせるし、もっと穏やかな話し方を心がけたらどうだろう?」とアドバイスを送りたくなったが、ぐっと飲み込んだ。
婚活の教訓:見た目だけじゃわからない「本当の相性」
まりことのデートを通じて、自分が何を求めているのか、そして婚活に何を期待していたのかを再確認する時間となった。結局、見た目の良し悪しや話題の豊富さよりも、「心の安らぎ」を求める気持ちが強くなっている自分に気づく。まりことのやりとりが、まるで人生の教訓のように心に刻まれた日だった。
婚活は簡単なものではない。時には相手に失望し、自分自身も傷つくことがある。しかし、それを通じて自分が本当に求めているものを見つけることができるなら、それもまた一つの価値があるのだと、そう思いたい。
こうしたリアルな経験が、婚活の道のりをより奥深く、時に厳しくさせるものだと実感。まりこに対する苛立ちや不快感も、振り返ってみれば自分を見つめ直すための大切な一歩だったのかもしれない。この記録が、同じように婚活で悩んでいる誰かの参考になれば嬉しい。