日本民藝館でのデートは、靴を脱ぎスリッパに履き替えるところから始まりました。彼女に「会計してくるね」と声をかけると、彼女は「はいっ」と少し怒ったような声を上げました。大人1人1100円、2人で2200円のチケットを渡すと、今度は嬉しそうな笑顔が返ってきました。
婚活の厳しい現実
婚活で何度も意に沿わない結果が続くと、女性は卑屈になりがちです。負のオーラが出るのも無理はありません。それが普通で、無邪気でいられる方が珍しいくらいです。
民藝館の魅力
民藝館では、昔の日用品が多く展示されています。祖母の家にあったものを思い出すような、丹波焼の古い壺や南朝時代の皿、江戸時代の着物などが並んでいます。古く焼けた絣や浴衣を見ると、祭りでしか見かけない服を日常的に着ていた人々の生活が感じられます。
柳宗悦の美への一途な思いが詰まった展示物には圧倒されます。展示物に共感できなくても、彼が一級の芸術家であることは確かです。
デートの続き
民藝館を出て駅までの道を歩きました。どこかに行きますかと尋ねましたが、彼女は夜に予定があると言いました。おそらく婚活の予定でしょう。込み入った話は避けるようにしました。
彼女に今読んでいる本を聞くと、私が紹介した安部公房の本を持っていました。彼女がいろいろと質問してくる中で、私が薦めた動画『安部公房、あの人に会いたい』も視聴してくれているようです。
再会の予感と婚活の厳しさ
今年は他の人と会う約束が多く、それが終われば彼女ともう一度会いたい気持ちです。しかし、オスカーワイルドの『ドリアングレイの肖像』にある「結婚の真の欠点は人を利己的でなくすることだ」という言葉が頭をよぎります。
帰りのプラットホームで、彼女は渋谷へ、私は明大前へ向かいました。彼女は笑った後で黙って電車に乗り、もう最後かなという予感がしました。その日も、次の日も彼女からの返事はなく、苛々が募ります。自己愛を傷つけられた怒りが湧いてくるのは何故でしょうか。