1. はじまりのジーナ
出会ったのは8年前。無邪気で明るいフィリピーナのジーナは、偽装結婚をし、フィリピンに家族を残して働く彼女の話に半ば信じ込んだ私は、彼女に20万円ほどを貸すことになりました。表向きは貸したお金ですが、私の中ではそれはもはやプレゼントのようなものでした。景気が悪化し、多くの飲み屋が閉店する中、ジーナは頻繁にお金を要求してくるようになりました。
2. 離れていく日々
仕事の忙しさもあり、私たちは次第に会わなくなりました。現在では、彼女の誕生日にlineを送るだけの関係に落ち着いています。
3. 府中での再会
最近、府中での用事の帰り道、深夜の国際通りを歩いていました。そこにはジーナが以前働いていた居酒屋があり、迷いながらも顔を出してみました。ママは暗い店内でポツンと座り、私に気付くと少しも動じずにじろじろと見てきました。
「ジーナさんはどうしています?」と尋ねると、ママは「今、川崎で働いているみたいよ。コストコですよね」と言いました。「子供を連れてきていたけど、言葉の壁もあって、帰ったみたいよ」と続けたママの言葉に、私は驚きを隠せませんでした。
4. 真実の発覚
ジーナが日本に来た当初から私はずっと嘘をつかれていました。彼女は子供がいないと言っていましたが、それは偽装結婚のための嘘でした。彼女も辛かったでしょう。私は彼女を心配しなくていいと思う一方で、深い寂しさを感じました。
5. 新たな理解と別れ
独身で彼女もいない私にとって、ジーナは特別な存在でした。彼女はきちんと家族の営みを経験し、離婚して娘をフィリピンに送り返していました。ジーナが妹の話をする時の楽しそうな表情は、実は娘のことを語っていたのです。
私は彼女の娘のために奉仕していたのだと気付きました。ジーナの母性愛に触れ、私は彼女に恋をしていたのです。
ジーナはいいお母さんになるでしょう。私が彼女に見た夢と現実を、これからは心に留めて生きていこうと思います。