4人目の女性との出会いも、婚活アプリ「YOUBRIDE」を通じたものだ。婚活アプリを使う女性たちは、ツヴァイのような高額な会員制相談所に入会することは少ない。私の年収は450万円程度なので、楽天オーネットの方が相応しかったかもしれない。
彼女と初めて会うのは市川駅。彼女は小説を読むのが好きで、最近は自分でも書き始めたという。プロフィールには、市川由衣に似ていると書かれており、学生時代に海外留学をして現地でネイティブと間違えられたことを自慢するような記述があったため、高慢なお嬢様を想像していた。
多摩センター駅近くに住む私は、千葉県の市川駅まで約2時間かかる。午後4時にはツヴァイのセッティングサービスで5人目の女性と日比谷で会う予定があるため、午前10時には市川駅に着き、待ち合わせの11時30分まで駅前の喫茶店で時間を潰すことにした。
待ち合わせ場所のびゅうプラザ前でメールを確認すると、ほどなく彼女が現れた。35歳というだけあって、厚化粧で顔は白く、目鼻立ちは整っているが、痩せすぎて不健康そうな印象を受けた。性欲を刺激されることはなく、むしろ彼女の虚弱さに引いてしまった。
「はじめまして、お会いできて嬉しいです」と挨拶すると、彼女はか細い声で「ええ」と答えた。存在感が薄く、幽霊のような印象を受けた。彼女が好きでおすすめの映画『めぐり逢う時間たち』の世界にいるような、不思議な感覚に包まれた。
喫茶店に行こうと提案すると、力のない声で「ファミレスなら」と答えた。彼女の案内で市川駅南口から大きなマンションの間を抜け、迷路のような道を進むと、見慣れたサイゼリヤの看板が見えてきた。
ファミレスは喫茶店よりもプライベートな会話がしやすい。天気や仕事、休日の過ごし方などのありふれた話題を一通り終えると、話すことがなくなり、沈黙が続いた。トイレに行く回数が増える中、ふと最近読んだ本にあった「真にモテる男はCCR(Compliment, Care, Reassure)」の内容を思い出し、実践してみることにした。
「お綺麗ですね。女優のようです。」
「海外留学で現地の方たちと自然に話せたなんて、素晴らしいですね。」
「腸閉塞で入院されたと聞きましたが、大変でしたね。リハビリをしながら週2回働かれているとは、お体を大事にしてください。」
彼女との会話は思いの外続き、気づいたら4時間も話し込んでいた。以前、婚活アプリで出会った男性が言っていた「美人の女性とは難しい」という言葉が頭をよぎった。私も婚活市場でモテるなら、同じように会計を済ませてすぐに立ち去っていたかもしれない。
彼女は小学校の頃から図書館に籠もり本を読んでいたという。内向的な性格で、まだ話したそうにしていたが、仕事の理由で市川駅を後にし、次の約束のため日比谷に向かった。