nyoraikunのブログ

日々に出会った美を追求していく!

『パーフェクト・デイズ』は、都市の言葉を失っている現代に、心の拠り所をもたらす映画作品!

ドイツ人が撮った日本映画、トイレ清掃の貧しい男を主人公としているというから、万引き家族や、パラサイト半地下の家族のような、アジア人はイエローモンキーだと納得させるニュアンスを崩さない、西洋人受けの良い作品なのかなと考えていたが、実に東京の都市生活を送る言葉にできない不安感を、どうすれば幸福にやり過ごせるのか? という示唆に富んだ内容だと言えそうだ。東京の都市生活を送るにおいて、どう生きるべきか? と問われて言葉を失ってしまうが、この作品は、全編、そのリアリティに溢れている。平山以外は、誰もが、都市生活を送る上での言葉を探し、伝えることで他者との通路の回復をはかっているのに、うまくいかないもどかしさを抱えている。
Tomoyama(三浦友和)が、居酒屋の女将であるMama(石川さゆり)と抱き合っているところを、役所広司演じる平山がのぞき見して、立ち去る場面がある。夜の河原で、Tomoyamaが平山に、さっき、見ていましたか?実は、彼女は元妻で、今は、再婚しているんですけど、気になって、会いに来たんですよね、実は、私は、癌で余命が長くないんです。世の中のことは、結局、わからずじまいだったなとぼやくシーンがある。
平山の姪である高校生のニコ(中野有紗)が家出をしてきて、おじさんの平山の家に寝泊まりし、翌日は、仕事のトイレ掃除についてくるようになる。ニコがスマホを向けて撮る動画には、トイレから出てくる平山と、利用しに入る女子高生の姿が映る。ニコの表情には、どう言葉に表していいかわからない戸惑いが見える。
平山とトイレ清掃の仕事をするタカシ(柄本時生)は、トイレの仕事にやりがいも感じていないが、水商売をしている女性アヤのことを彼女だと信じて、その資金源のために頑張っているといった感じだ。それでも、いつも店でしかアヤが会ってくれないことで、お金をなんとか捻出しようと、カセットテープを売っていいか? 恋をするのにお金がかかるなんてひどくないですか? と平山に泣きつく場面がある。また、アヤも、平山にテープを返しにきて、タカシは何か言っていたか? と聞いて、涙を目に浮かべる。お金のために、付き合っているに過ぎないのだろうし、私が風俗嬢にガチ恋をしているのと同じ状況であろう。
それぞれの登場人物は、皆、言葉を失っている。というより、言葉で表したいことがうんとあるのに、表現できないもどかしさが全編にみなぎっているのだ。これこそ、東京を真正面から捉えた作品ではないか? 
最後に車内で音楽を聴き、平山が東京の街を車で走らせるところがクライマックスとなる。本棚に書物が溢れかえっているほど、読書をする平山の脳裏には、この街で幸せに生きる言葉が、音楽のように木霊しているに違いないと思えた。

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10万pvありがとうございます!5年かかりました。感動ひとしおです!

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