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日々に出会った美を追求していく!

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日本民藝館 無名の汚い器に婚活の自分を投影する。

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日本民藝館で靴を脱いでスリッパに履き替える。会計してくるねと声をかける。彼女は「はいっ」と怒りに似た声を上げる。大人1人1100円だから、2人で2200円。チケットを渡すと、ありがとうございますと今度は嬉しそうな笑顔だ。
 婚活で会っては意に沿わない結果を2、3度繰り返すと、女性は卑屈になる。負のオーラが出てくる。その方が普通で、無邪気であったらかえって病的というものだ。
 民藝館は、どれも昔の日用品が多く展示されている。祖母の家に置いてあったものを思い出す。丹波焼による古い壺が多い。南朝時代の皿を主とした食器も多い。江戸時代、それより昔の民衆の着物もあった。絣、木綿、浴衣が古く日に焼けたような状態で展示されていると、今では祭りの時にしか用いない服を着て、生活をしていた人々の生活に触れたような気にもなる。
パンフレットにもあるように、無名の職人によって作られた民衆の日用雑器の中にある美は、柳宗悦の美への純粋な一途さに凄みがあり圧倒される。展示物に共感は出来なくても、彼は一級の芸術家であることは確かだ。
 民藝館を出て駅までの道を歩く。どこかに行きますかと喫茶店に入るのを潔しとしない。告白をされたら返答に困るとでもいうのだろうか。今日の夜に用事があるというのは、きっと、婚活であろうと考えられる。だから、込み入った話はしないように気をつけた。こればかりは、私の直観だから、積極的にグイグイと行く方が良いという忠告は間違いではないかもしれぬ。
 喫茶店では、今読んでいる本は何かと聞いたら、彼女は、私が紹介した安部公房の本を持っていた。嬉しいことだ。彼女は色々聞いてくるが、実は薦めた本人があまり読んでいない。「YOUTUBEで『安部公房、あの人に会いたい』をキーワードにして検索して、その動画を見ると、こんな頭切れる奴いんのかと驚くよ。こんな一コマがあるんだ。
『僕にとっての関心とは今を見ること。それはメビウスの輪ですよ。それを表す箱とか砂とか壁とかのいい投影体をさがすことですよね』」旧制一高が何故好きかという彼女の本質にかかわる質問は避けたが、ナンバースクールに関する読み物の中で一番いい書籍を教えてもらった。『自治寮生活』というものだ。国立国会図書館のネット書籍で無料で読めるものだ。今度の休みに読んでみよう。
 私も今年は他の人と会う約束が結構ある。それを終えて、タイミングが合えば彼女ともう一度会いたい気分なのだ。もう独身でもいいのかもしれない。オスカーワイルドの『ドリアングレイの肖像』におけるヘンリー卿の言葉がある。
「結婚の真の欠点は人を利己的でなくすることだ。利己的でない人間はつまらない。生彩を欠いているんだよ」
 帰りのプラットホームで、彼女は渋谷へ、私は明大前へ行くことになる。彼女は、笑った後で、黙って電車に乗った。もう最後かなという予感が湧いてくる。婚活はこういうものだ。
 その日も、次の日も返事がこない。苛々している。自己愛を傷つけられた怒りが湧いてくるのは何故だ? 

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カテゴリ
阪神タイガース・プロ野球・スポーツ