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東大駒場博物館 旧制一高中毒に陥った彼女との愛はあるのか?

さすがに10歳年下のロリータへの挑戦は難なく散りそうだ。返事がこない。もう少し引っ張って、話をしても良かったのにという後悔もある。彼女もこれから多くの異性と会う中で、私の姿は記憶の奥へと消えていくだろう。
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 立川時計台の前で待ち合わせしてから約一月が経った。文学好きの公務員、32歳の女性と東大駒場キャンパスに行くことになった。11月4日(月)文化の日の東大は学生の数も少なく静かであった。
 Mさんと会う13時の30分前に着いたので、キャンパス内を歩き回ってみた。

 13時ぴったりに駒場東大前の改札口に姿を現したMさんは、目を合わせようとせずに、足をただ早めて、階段を降りていく。嫌々ながら来たという感じ、不本意さが進みゆく足にこだましていた。門の前の学生達がつくった看板に、「愛国」の文字を見つけた。

「東大ぐらいになると、国を背負っていくんだみたいな気持ちになるのかな。俺の行っていた大学では、こんなメッセージの看板は学内に無かったな」
 彼女は、京都大学に行った時も、看板があったと消え入るような声で応えた。
 門を入って右手に進んですぐに駒場博物館がある。その前に立って、二人旧制一高時代に図書館だった建物を見上げた。写真を撮っていいですか? と彼女の機嫌は急に良くなった。積んであるのは、今回の展示物のパンフレット『東大野球部百年』である。彼女の手が無邪気に弾んだように動くと、パンフレットを取り損ねた。もう一度落ち着いて、今度はしっかりと人差し指と親指で1枚を掴んだ。
「写真を撮っていいんだって」
 と顔を紅潮させて、私に話してくる。それから、ほとんどすべての展示品を写真に収めていた。携帯のシャッター音が何度も静かな館内に響いた。何故、それほど旧制一高のエリートの生活に興味があるのか不思議だった。

1勝ごとに旧制一高の校章入の箱へウィニングボールを大事にしまっていたのだろう。今よりも競技への敬意(リスペクト)が溢れている。
「母親の父が東大を出ているんだ。母親が昭和20年生まれだから、それ以前に東大を卒業しているとなると、旧制一高かもしれないね」
 と私は自分をアピールした。彼女はそうなのとふて腐れたように笑ってから、目を丸くして私のことを眺めている。
 女性は遺伝子を気にするというではないか? 遺伝子が良いところをそれとなくアピールしていくのは効果的なのか?
 見終わってから、機嫌を少しは取り戻したようだった。楽しそうにしている。本郷キャンパスに行きますか? と聞いてみた。行き方は? と気乗りなく聞き返してくる。旧制一高とあまり関係ないから、やっぱりお茶でもしましょうと誘ってみた。
日本文学館があるからという話だから、私も興味があるし、駅横の細い道を二人並んで降りていった。文学館は毎週月曜日は休みであった。駒場公園の外れにある日本民芸館に彼女は行ったことがないというから、代わりにそこへ行くことに決めた。
前田伯爵邸の横を通って、草藪の中を通るひっそりとした細い泥道を、私が前に出て歩いた。前から五十路前ぐらいのカップルが手を繋いで歩いてくる。夫婦かもしれないが、二人の容姿に私達の近い未来の姿が投影されていて、虚しくなってきた。
日本民芸館で私達はさらなる幻滅を味わうことになった。

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阪神タイガース・プロ野球・スポーツ