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フィリピーナの嘘に傷つくアラフォーの秋

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無邪気なフィリピーナのジーナにはまった私は、偽装結婚をしていて、子供もいず、フィリピンに残してきた愛する家族のために犠牲になって働いているという言葉を半ば信じて、8年近く追いかけた。彼女に20万円ぐらい貸している。表向きは貸したことではあるけれど、あげたと考えているからその点はいい。不景気になって飲み屋の多くが潰れてから、彼女はお金を請求してくるようになった。靴を買って欲しい、靴下を買って欲しい、ベルトが欲しいということが主になってきた。私も転職したのを機に、仕事も忙しくなり、会わなくなっていき、今では、誕生日の日にlineを送るだけになっている。
最近、府中に用事があった時に、深夜、府中国際通りを歩いた。フィリピンパブを追い出されたジーナが次に勤めていた居酒屋がある。迷った挙句、顔を出した。ママが暗い中、ポツンと椅子に座ってテレビを眺めていた。私が挨拶すると、少しも動じずに、私の顔をじろじろと見てくる。
ジーナさんはどうしています?」
「今、休んでいる。川崎で働きに行っているみたいだから……」
「あぁ、コストコですよね」
「そうだね」
 とママはうなずいた。
「子供を連れてきていたけど、言葉の壁もあって、帰ったみたいよ」
「えっ?子供ですか? 結婚されたんですか?」
「知らなかったの?」
 とママは真剣な顔になった。
「妹だって話していたけど、十五歳の妹なんて不自然だから、子供のことかなぁと思って聞いていたんですけどね。日本に来てすぐ、パブで出会ったという感じですか?」
「そうそう。随分前だよ」
 とさらに驚いたように身体をこちらへ向けてみせた。

私はずっと嘘をつかれていたのだ。子供はいないと、偽装結婚だからチノさんという人物と会ったことはないと。当たり前と言えばそうだけど、嘘をつき続けて彼女も辛かっただろう。これで彼女のことを心配しなくてもいいと思うと同時に、ひたすら寂しかった。独身で彼女いない歴半端ない私は、やはり彼女を前にしても独りぼっちだったのだ。ジーナはきちんと家族の営みを経験し、離婚をして、娘を故郷フィリピンに返した。娘のために一生懸命に働いていたのだろう。妹の話をする時は、楽しそうだった。シャツとか、ベルトとか、靴とかを家に持って帰ると、妹にとられちゃうけどと満面の笑みであった。私は彼女の娘に奉仕していたのだ。ジーナは、いいお母さんになると夢中になっていた私は、その有り余る母性愛を目の当たりにして、恋していたに過ぎないのだ。

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カテゴリ
阪神タイガース・プロ野球・スポーツ