概要
第二次世界大戦にアメリカが参戦した翌年の1942年に製作が開始され、同年11月26日に公開された、物語の設定時点の1941年12月時点では親ドイツのヴィシー政権の支配下にあったフランス領モロッコのカサブランカを舞台にしたラブロマンス映画。監督はマイケル・カーティス。配給はワーナー・ブラザース。
ストーリー
1941年12月、親ドイツのヴィシー政権の管理下に置かれたフランス領モロッコの都市カサブランカ。ドイツの侵略によるヨーロッパの戦災を逃れた人の多くは、中立国のポルトガル経由でアメリカへの亡命を図ろうとしていた。
アメリカ人男性のリック(ハンフリー・ボガート)は、パリが陥落する前に理由を告げずに去った恋人イルザ・ラント(イングリッド・バーグマン)と、彼が経営する酒場「カフェ・アメリカン」で偶然の再会を果たす。パリの思い出である『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』が切なく流れる。
イルザが店を去って再び過去の痛みに苦しむリック。
イルザの夫で、現在はドイツに併合されたチェコスロバキア人のドイツ抵抗運動の指導者ヴィクトル・ラズロ(ポール・ヘンリード)は現地のオルグと接触、脱出のチャンスをうかがっていた。フランス植民地警察のルノー署長(クロード・レインズ)は計算高い男だが、流れに逆らうように異郷で生きるリックにシンパシーを感じ、かつてスペインのレジスタンスに協力したリックに、ラズロには関わるなと釘を指す。現地司令官であるドイツ空軍のシュトラッサー少佐は、ラズロを市内に閉じ込める。
イルザは、夫を助けられるのは闇屋のウーガーテ(ピーター・ローレ)からヴィシー政権の発行した通行証を譲り受けたリックしかいないと、必死に協力をお願いする。そして通行証を渡そうとしないリックに銃口さえ向ける。しかし引き金を引くことが出来ないイルザ。2人はお互いの愛情を確かめ合う。
リックは、ラズロとイルザが通行証を欲しがっている事実をルノー署長に打ち明け、現場でラズロを逮捕するようにと耳打ちする。手柄を立てるために、約束の閉店後の店にやってきたルノーだが、リックの本心は、2人を亡命させるためにルノーを空港まで車に同乗させて監視の目を欺く点にあった。シュトラッサーを射ち殺してでも彼女を守ろうとするリックは、過去の痛みに耐えていた彼ではなかった。
愛を失っても大義を守ろうとしたリックを前にして、実はレジスタンスの支援者であったルノーは、自由フランスの支配地域であるフランス領赤道アフリカのブラザヴィルへ逃げるように勧めて、見逃すことにする。
2人と連合国の未来に希望を持たせながら、彼らは宵闇の中へ消えていく。 wikipediaより
感想
パリにおいてファシズムと闘う男二人と女一人の三角関係を描いた作品であろう。ドイツが悪役で敵国として描いており、フランスの三色旗(自由・平等・博愛)の精神を讃美し高揚させる内容になっている。
戦意高揚のプロパガンダ映画という点からすれば、とても良く出来ている。世界情勢の不安が過度に高まったゆえに、現状打開の策として、このような名作が生まれたともいえるだろう。
勇気とユーモアはセットであるというが、リックはところどころでユーモアを発揮して、落ち着きを保っているように見える。日本映画の主人公にほとんどいないタイプではないだろうか?
女「昨夜はどこにいたの?」
リック「そんな昔のこと、覚えていないね」
女「今夜逢える?」
リック「そんな先のこと分からない」
ウガーテ「2人のドイツの特使は気の毒だったね?」
リック「2人はラッキーだったさ。昨日は単なる2人のドイツの役人だったのが、今日は名誉の死を遂げたのだから」
ウガーテ「君は本当に皮肉屋だね。そう呼んでも許してくれるかい?」
リック「許すよ」
シュトラッサー「愛するパリにドイツ軍がいることなど想像もできない人々の1人かね」
リック「特に私が愛するパリにはね」
ルノー「いったい、なんだってカサブランカなんかに来たんだね?」
リック「健康のためさ。カサブランカの水のために来たんだ」
ルノー「水?何の水だ?砂漠の真ん中だぞ」
リック「情報が間違ってたんだ」
リック役のハンフリー・ボガートが恋人イルザ・ラント役のイングリッド・バーグマンへの恋心や葛藤の中で、「俺は何者でもないが、世界が悪くなるのを見過ごすわけにはいかない」という大義のために、恋を断ち切る姿はしびれるほど格好いい。
カサブランカ・最後の場面/ Casablanca Final
この映画は筋立て(起承転結)がしっかりしているし、テーマが細部までしっかりと浸透している。「時の過ぎ行くままに」「Knock On Wood」「ラ・マルセイエーズ」「ラインの守り」の歌が場面に効果的につかわれているため感情移入しやすい。
カサブランカ (1942) As Time Goes By フランク・シナトラ
Knock On Wood - Dooley Wilson (Casablanca - 1942)
ラインの守り vs ラ・マルセイエーズ 1942
私的な幸福(恋愛)と大義の葛藤を乗り越えていくリックの男気溢れる姿、作中に4度もリックが口にする「君の瞳に乾杯」という言葉にうなずけるだけの美しい容姿をしたイルザがあって、『カサブランカ』を不朽の名作にしている。
婚活でコンタクトを申し込んで承諾してくれた女性と次々会っていると、このような恋愛を一生に一度はしてみたいと憧れてしまうのである。戦争はいけないけれど、死と隣り合わせの中に生の充実が現れることは揺るがし難い事実であろう。