パク・チャヌク監督の映画『別れる決心』を、社会学者の宮台真司氏が「現代人の資本主義国における生活のつまらなさを特によく描いている」と評価していたので観てみた。私にとっては、生きることのつまらなさ以上に、恋愛のリアルが美的な映像と共に鮮やかに伝わってきたことに感心した。恋愛は多忙な生活の中ではなかなか成り立たないものであり、この映画が描く熱烈な恋愛感情は、むしろ退屈でつまらない日常に裏打ちされているからこそ可能なのだと感じた。現代人の視点からこのテーマを鮮やかに切り取ったこの作品には、賛辞を惜しまない。
主人公の探偵(刑事)は、崖から落ちた死体の犯人を捜す過程で、疑われた女性に恋をしてしまう。職務としての責務と恋愛感情が交錯するこのカタストロフィーは見事だ。彼女が祖母の骨を山の上に散布し、その後、息が白くかすむ場所で刑事と熱烈なキスをするシーンは、ストーリーの進行以上に美しい映像として心に残る。
彼女は2度の誤認によって逮捕を免れ、最終的には自殺を決意する。海岸の砂浜に大きな穴を掘り、満ち潮を待つ彼女。その姿を追う刑事は、携帯電話に録音された彼女の声を聞きながら砂浜をさまよう。職業意識とあり余る愛が交錯する彼の心情は、荒れた波頭に象徴されるかのように、視聴者に鮮烈な余韻を残す。
この映画を観ると、韓国映画が日本映画を超えていると認めざるを得ないかもしれない。これほどのスケールと普遍性を持つ作品は、日本には少ない。役者の演技も実に素晴らしい。私が学生時代に観た韓国映画はステレオタイプのキャラクターとありきたりのストーリーが多かったが、今では芸術と呼ぶにふさわしい作品が韓国の文化から生まれている。
映画の冒頭、死んだ男性の目にウジ虫が這うシーンは、このいびつな純愛の物語において、視覚の本来の役割をデフォルメし、純愛を損なう認知機能への揶揄と解釈できるかもしれない。見ることで生じる雑念が愛の不可解さを増幅し、それがまるで目にウジ虫が這うような感覚を生む。純愛を見つめるには、荒々しい海と波しぶきの中にこそその答えがあるのだろう。
『別れる決心』は、恋愛のリアルと美を追求しながら、現代社会の複雑な感情を鮮やかに描き出した傑作だ。この作品は、日常のつまらなさとそれに反する激しい恋愛感情がいかにして共存するかを示している。
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