劇団四季のミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』を観るために調布の劇場へ足を運びました。この公演は評判が高く、劇場内は観客で溢れかえっていました。全国的に高い評価を受けている劇団四季の実力が感じられました。
ファミリーミュージカルということで、家族連れが多く見受けられました。特に目立ったのは、小さな子供を連れた若い母親たちでした。その中の一人の母親は、泣き出す赤ちゃんを宥めながら観劇していましたが、とうとう劇場を出て行きました。彼女自身がこのミュージカルを観たくて来たのだろうと思うと、結婚や育児がどれほど女性の行動を制約するかを感じさせられました。
物語は、卵を抱えたツバメが猫のゾルバに託され、ゾルバがその卵から孵ったツバメ(フォルトゥナータ)を飛べるように育てる話です。ゾルバがチンパンジーのマチアスに飛ぶ方法を教わるシーンは非常に感動的でした。マチアスは猫を憎むネズミたちのボスで、ゾルバに飛ぶ方法を教える代わりにネズミの尻尾を要求するという、恐ろしい敵役です。しかし、最終的にはマチアスも心を開き、フォルトゥナータが飛ぶ方法を教えるシーンは心に響きました。
このミュージカルは、殻を破る大切さや親子愛のあり方を問いかけているように感じました。私自身、45歳の父親に溺愛されて育ちました。高校まで野球を続け、父は阪神タイガースの選手になることを期待してくれていましたが、大学1年で野球を辞めたとき、父ががっかりした姿を今でも覚えています。父親の期待に応えられなかった自分を思い出し、フォルトゥナータが飛べたことに心からの感動を覚えました。
この話は元々ドイツで作られた物語です。この物語を聞いて育った人々の中には、多くの著名人が影響を受けています。例えば、作家のエリック・エマニュエル・シュミットは、この物語を通じて「真の勇気とは恐怖を乗り越えること」というテーマに深く感銘を受けたと述べています。彼は、「ゾルバのように自分の信念を持ち、他者の成長を助けることの大切さを教えられた」と語っています。
また、ドイツの著名な心理学者であるハンス・シュルツェは、この物語を「人間関係の基盤となる信頼と自己犠牲の重要性を描いた傑作」と称賛しています。彼は、「親が子供に対して持つ愛情と期待のバランスが、いかに重要であるかを教えてくれる」と感想を述べています。
劇団四季の『カモメに飛ぶことを教えた猫』は、ただのファミリーミュージカルではなく、深いテーマを持つ作品です。人間が弱さと強さを対にして発展してきたこと、親子の愛や教育の難しさなど、多くのことを考えさせられました。
公演後、ロビーでは役者たちが観客と握手をしている光景がありました。これは、劇団四季ならではの温かい交流の一環です。
今回の観劇は、私にとってただの娯楽ではなく、多くのことを考えさせられる貴重な時間となりました。観客としての視点からも、劇団四季の実力を改めて実感し、その魅力を多くの人に伝えたいと思います。
(この記事は過去に書いた記事のリライト版です)