5人目は日比谷のツヴァイセッティングサポートを利用しての出会いである。お互いの連絡先が開示されないまま会って、相性がいいとすれば、連絡先を交換する、場所を移して話しでもするという内容である。 席について16時になる数分前に尿意を催した。この頃、小便が近くなったと思う。カウンターにいるスタッフに断りをいれて、扉口に行こうとしたところで、相手の女性が嫌そうな顔で入ってきた。電車の中で、隣のおじさんがくしゃみをして、顔面にかかった後のような不快さが顔に表れていた。私の方に関心を示さず、自分の中にある葛藤と闘っているような感じがした。無理だなぁと思った。
私営の図書館に勤めているのは、学生の頃、図書館が居場所だったかららしい。小学校の頃から人と交わらず図書館に入り浸っていた4人目の女性は、文学少女らしい内気な落ち着きが全体から漂っていた。しかし、目の前の彼女は文学を支えにしているような憂愁さが無く、好きな本を聞いても、何も応えようとしないのだ。
「本はあまり読まないです」
ゆっくりと落ち着きを保つように言った。
「図書館にずっといたんですよね?」
「あの雰囲気が良くていただけです」
「???」
「江戸東京博物館が良かったそうですけど、どうでした」
「妖怪だけ見て帰ったのでわかりません」
市営の図書館じゃないんですね? と聞くと、そこで働くのは、相当勉強しないとなれないと怒り出す始末だった。女性というより、幽霊と話しているような気持ちにさせる。スポーツのルールがほとんどわからないらしく、野球は見たことすらないそうだ。いかなる時でも、CCRの男でなければと、気持ちを鼓舞した。
「あなたの耳飾りは、フェルメールの真珠の耳飾りの少女のようですね」
「これ、木でできているんです」
彼女はつれなく疲れた調子でうつむいた。
LINE IDを交換をしたところで、市役所に行かないとと急ぎ出して、相手は早歩きで帰ってしまった。LINE IDの画面は妖怪の絵であった。
4人目の女は、人柄がまだわからないので、次回会いましょうということであったが、5人目はイメージしていた人とはちょっと違ったと返事がきた。とにかく、よほどのことがなければ、次回会おうという誘いのメールは入れるようにしている。自分で考えている自分、他人が考えている自分を一致させていこうとする努力は、婚活だけでなく、すべてにおいて変わらない。
敵を知り己を知れば百戦危うからず 孫子
我思うゆえに我あり! デカルト